SD-WANとMPLSの比較

SD-WANとMPLSの比較

ビジネスは、ますますグローバル化しています。ビジネスに不可欠な、国境を越える拠点間トラフィックのルーティングが増える中、パケットロスやレイテンシーの発生を避ける必要があります。これまでのネットワークアーキテクチャでは、2017?年のグローバルビジネスに対応できません。

グローバル企業のニーズに対応するために、ネットワークアーキテクチャは進化しています。貴社のニーズに適しているアーキテクチャは、MPLSとクラウドネットワークのいずれでしょうか?  答えは状況によって異なります。

ビジネスニーズと規制

意思決定の際に考慮すべき重要な点は、規制遵守およびビジネスニーズです。規制によって選択肢が狭まることもあります。しかしネットワークは戦略的なビジネス資産であり、ビジネス全体のパフォーマンス最適化に欠かせません。

SaaSやクラウドの普及とビジネスに不可欠なアプリケーションのモバイルへの継続的な移行、そしてビジネス環境のグローバル化に伴い、安全かつ低コストの接続が国際的なビジネスオペレーションの維持に不可欠となっています。さまざまな市場で事業を展開するグローバル企業にとって、安定して最適化されたネットワークは、ミッションクリティカルな資産です。

MPLSのメリットとデメリット

コストが高いMPLSサービスを利用する最大の理由は、その「信頼性」です。サービスレベル契約(SLA)の保証項目には、レイテンシー、パケット配信、可用性が含まれています。 障害が発生した場合、MPLSプロバイダーは指定された期間内に問題を解決する必要があります。解決できなければ、ペナルティが発生します。

ただし、MPLSサービスにはコストがかかります。価格が下がっているとはいえ、MPLSサービスはインターネットサービスに比べると、かなりコストが高いです。Telegeographyによると、2016年第4四半期における10MbpsのDIA価格の中央値は、MPLS IP VPNのポート価格よりも平均して29%低い値となっています。

今一度、特定のアプリケーションや拠点のネットワークパフォーマンスと品質保証の重要性を評価する必要があります。重要度が高ければ、MPLSを利用する必要があります。

ただし、MPLS接続では、インターネットトラフィックが中央のインターネットアクセスポイントに戻された後、インターネット経由で送信ユーザーの最寄りの転送先に送り返される、インターネットトラフィックのバックホールにより、「トロンボーン現象」が発生し、リモートブランチのクラウドパフォーマンスが低下する可能性があります。ポータルがアウトオブパス構成であったり、転送元から離れている場合、遅延時間が増し、クラウドのパフォーマンスが著しく低下します。

MPLSネットワークのメリットMPLSネットワークのデメリット
– 低レイテンシー– コストが高い
– 低パケットロス– セットアップに時間がかかる:数週間から数ヵ月
– 稼働率と性能保証– クラウドのパフォーマンスが劣る

SD-WAN:両方のメリットを活かす

低コストなインターネットサービスが普及しているにもかかわらず、遠隔の拠点間で予測可能なパフォーマンスと信頼性の高い接続を実現するには、つい最近まで高額なMPLS接続を利用する他に手段がありませんでした。

SD-WANは、公共のインターネット接続やMPLS接続から最も効率的な転送サービスを動的に選択するネットワークを構築してWANを再定義します。これには、コスト効率と機動力という、2つの大きなメリットが含まれます。

SD-WANは、ポリシー、AAR(アプリケーションを意識したルーティング)、動的リンク評価により、複数のWAN接続を単一のSDN(ソフトウェア定義型ネットワーク)のアグリゲーションにより、アプリケーションごとに最適な接続を選択します。最終的な目標は、低コストな公共のインターネットを利用して、適切な性能と稼働率のバランスをとることです。

 

クラウドベースのSD-WAN:一歩先を進む

クラウド型SD-WANは、セキュリティ強化、シームレスなクラウド、モバイルユーザーへの対応など、クラウドインフラで得られる先端機能を提供します。また、クラウド型SD-WANは、SLAベースのバックボーンで実行されるため、公共のインターネットに比べると、レイテンシーとパケットロスをはるかに容易に予測することが可能です。

つまり、MPLSをクラウドベースのSD-WANに置き換えることで、WANへの投資に縛られていたリソースを解放し、新たな可能性に注力できます。ビジネスプロセスがクラウドに確実に統合されているグローバル企業が、クラウドベースのSD-WANを新たに導入しているのは一般的なユースケースです。

まとめ

企業ネットワーキングはそれぞれ異なるため、絶対的な選択肢はありません。しかし、クラウドベースのSD-WANは、効率と柔軟性を求めるグローバル企業のネットワーキングへの従来の取り組みで直面する多くの課題を解決します。

関連リソース:

SD-WANからSASEへの移行

SASE(Secure Access Service Edge)とは?

SD-WANに関するよくある質問

  • SD-WANとは?

    SD-WAN(ソフトウェア定義型広域ネットワーク)デバイスを企業の拠点にセットアップして、MPLS、LTE、ブロードバンドインターネットサービスなど、基盤となるあらゆる転送サービス全体にわたって、デバイス間に暗号化されたオーバーレイを構築できます。

  • SD-WANのメリット?

    帯域幅コストの削減:MPLSの帯域幅は、高額なコストがかかります。「ビット当たりの価格」で見ると、MPLSは公共のインターネットの帯域幅よりもかなり高額です。正確なコスト比較は、立地条件をはじめとするさまざまな変数によって異なります。MPLSは、単に帯域幅あたりのコストが大幅に高いだけではありません。MPLSリンクのプロビジョニングは、数週間から数ヵ月かかることが多いのに対し、同等のSD-WANの導入は多くの場合、数日で完了します。ビジネスにおいては「時は金なり」です。ボトルネックとなっているWANを排除することが大きな競争力につながります。
    公共のインターネットを信頼性の高いネットワークに転じる:アクティブ/アクティブ構成で実行される複数のデータサービスを使用して、拠点間を接続できます。ダウンタイム時にセッションを別の転送に切り替える、1秒未満のネットワークフェイルオーバーにより、アプリケーション中断を回避できます。
    安全な通信:暗号化された接続により、すべての転送にわたって、実行中のトラフィックを保護します。
    オンデマンドの帯域幅: 帯域幅を即座に増減して、重要なアプリケーションに必要な帯域幅を必要なときに確保できます。
    即時の拠点立ち上げ:MPLSでは数週間から数ヵ月かかる新しい拠点の立ち上げを、わずか数分で完了できます。SD-WANのノードは自動的に構成され、4G/LTEを使用してすぐに展開することができます。

  • SD-WANの採用を推進する主なトレンド?

    これまでは、マネージドMPLSサービスなどのレガシー通信事業者サービスを利用してネットワークが構築されてきました。これらのサービスはコストが高く、サービスを開始するまでに数週間から数ヵ月を要し、簡単な変更でもサービスプロバイダーのサービスが必要です。
    SD-WANは、このような状況から脱却し、ITネットワークにアジリティとコスト効率をもたらします。SD-WANは、複数のインターネット接続を利用して拠点間を接続し、暗号化されたオーバーレイでアグリゲーションを行います。オーバーレイのポリシー、AAR(アプリケーションを意識したルーティング)、動的リンク評価により、基盤となるインターネット接続の利用を最適化できます。

    最終的にSD-WANは、安価な公共のインターネットを利用して企業が必要とするセキュリティと可用性を提供し、適切なパフォーマンスと稼働率を実現します。

  • SD-WANの制限?

    グローバルバックボーンの欠如: SD-WANアプライアンスは、基盤となるネットワークインフラにセットアップされます。つまり、SD-WANアプライアンスだけではなく、パフォーマンスと信頼性の高いネットワークバックボーンも必要です。
    高度なセキュリティ機能の欠如: SD-WANアプライアンスは、最新のネットワーキングの多くのユースケースに対応していますが、セキュリティ要件には対応していません。このニーズを満たすために、多くの場合、さまざまなベンダー(CASBなど)のセキュリティおよびネットワークアプライアンスのパッチワーク管理が必要です。また、各アプライアンスを社内のIT部門やMSPが調達、プロビジョニング、管理する必要があるため、ネットワークのコストと複雑さが増します。
    テレワークをサポートしない: SD-WANアプライアンスは、拠点間の接続用に構築されています。SD-WANアプライアンスは、リモートワークの安全な接続には対応していません。