リモートワーカーの急増とZTNAへの移行
従来、IT組織はVPN接続を利用して企業ネットワークへのリモートアクセス環境をユーザーに提供してきました。しかし、COVID-19の影響によるリモートワーカーの急増に伴い、VPN接続の容量が従業員の快適な同時アクセスを妨げるという現実に多くの企業が直面しています。現在、世界中で外出制限等は緩和されていますが、リモートワークの必要性は高まり続けており、リモートワーカーに対するこれまで以上のサポートが求められています。
ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)は、明確に定義されたアクセス制御ポリシーに基づいて、組織のアプリケーションやデータ、サービスへの安全なリモートアクセスを提供するITセキュリティソリューションです。LANへの完全なアクセスを許可するVPNとは異なり、ZTNAソリューションはデフォルトでアクセスを拒否し、ユーザーが明示的に許可されたサービスへのアクセスのみが提供されます。ガートナー社によると、2022年までに新しいビジネスアプリケーションの約80%がZTNAを通じてアクセスされ、2023年までに企業の約60%がリモートアクセスVPNを廃止し、ZTNAに移行すると予想されています。
広域ネットワークアクセスの境界をなくすZTNA
従来のネットワークセキュリティは、その周辺部のみを保護しているに過ぎませんでした。許可されたネットワーク認証情報を持つユーザーは、ネットワーク上のすべての情報と内部リソースにアクセスすることができ、規制対象やビジネスクリティカルな情報にもアクセスできる状況にあったのです。従業員がオフィス内でデータにアクセスする場合や、情報がオンプレミスで一箇所に保存されている場合、広域ネットワーク境界は問題なく機能していましたが、ネットワークの境界外にあるクラウドデータへのアクセスの必要性や、リモートユーザーの劇的な増加により、データリソースをグループごとに保護するZTNAに移行する企業が増えています。
またデータ漏洩の約30%は組織内部に起因しますが、最小特権アクセス、多要素認証、マイクロセグメンテーションといったゼロトラストの原則を活用することで、ネットワーク内の個々のユーザーに対して厳格な管理を実施できます。ゼロトラスト・アプローチではネットワークの内外を問わず、すべてのユーザーが脅威とみなされ、各エントリーポイントでの認証が必要となります。ZTNAでは、広域ネットワーク境界に依存せずアクセスを許可するための明確な方法が確立されています。
ネットワークアクセスにおけるゼロトラストのメリット
ゼロ・トラストのコンセプトは、企業を保護し、外部からの脅威を阻止し、有害な内部脅威から個人を保護するための様々なポリシーを提供します。ゼロトラストは検証の概念に焦点を当て、次の点で組織にメリットをもたらします。
1. ネットワークの可視化
データとコンピューティングデバイスを横断し、組織全体の脅威を監視するアプローチを強化することで、ネットワークに対する洞察力が高まり、アクセス・リクエストごとのタイムスタンプ、アプリケーション、ユーザー、場所をより意識するようになります。標準的でない動作はすべてセキュリティ・インフラによってフラグが立てられ、リアルタイムですべてのアクティビティを追跡することが可能になります。ネットワーク全体の可視性を高めることで、誰が、あるいは何がネットワークへのアクセスを許可されているか、より深く理解することができます。
2. データ保護の向上
データ漏洩は、サイバー犯罪者が効果的に企業の身代金を要求する方法の一つですが、ZTNAはマルウェアやネットワークの大部分への不当なアクセスを防ぎ、攻撃の可能性を減らすことができます。また、たとえ侵入されたとしても、ネットワークへのアクセスが最小限であれば、被害を最小限に食い止めることができ、ビジネスだけでなく顧客や知的財産も保護することになります。その結果、顧客からの信頼を高め、データ流出から生じる混乱の収束のための財政的負担も回避することができます。
3. 遠隔地の従業員へのセキュリティ強化
COVID-19から生じた最も一般的なビジネス適応はリモートワークでした。しかしリモートワークが広く受け入れられるようになったにもかかわらず、ネットワークやデバイスのセキュリティ対策が不十分なためにリスクが高まっています。世界中で働くワーカーを抱える企業は、非効率なファイアウォールのためにリスクにさらされる可能性を持っています。
ZTNAはあらゆるレベルでユーザーの識別と確認を要求し、プライベートネットワークと別のパブリックネットワークの間にファイアウォールを設置する「境界の概念」に基づいています。すべてのユーザー、デバイス、アプリケーションは、アクセスのためのセキュリティレイヤーが保証され、世界中のどこにいても、データがどこに保管されていても、ワーカーに対してより強固な保護が提供されます。
4. 手作業によるIT管理の必要性を低減
ZTNAのコンセプトは継続的な監視に重点を置いており、自動化されたプロセスを取り入れることで、組織のITチームはよりシンプルに物事を進めることが可能となります。すべてを手作業で行っている場合、各リクエストの承認に多くの時間がかかるため、生産性やワークフローが低下し、ビジネスに悪影響を及ぼすことになります。
自動化パッケージは、特定のセキュリティ識別子に従ってアクセス要求の判断をプログラムすることができるため、ITチームがすべてのリクエストを手動で承認する必要がありません。また手動アクセスはワークフローの低下だけでなく、ヒューマンエラーの可能性も増大させます。自動化により全てが解決するわけではありませんが、自動化によってチームは煩雑な管理業務に追われることなく、ビジネスの改善と革新に取り組むことができるようになります。
リモートワークをサポートする方法について、詳しくはCato eBook「Work From Anywhere for Everyone」をご覧ください。